この曲は肉版のベストにも収録されており、比較的有名な曲だと思います。
1994年、『Atomic Heart』に収録されている曲です。
悲しい恋の歌ですが、Mr.Childrenらしく、悲しい歌はただ悲しいまま終わらせるのではなく、しっかりと前を向いていけるような素晴らしい曲ですよね。
この『Over』というタイトルは恋が終わる、「Love is over」という意味と、前置詞「over」が有する「~を超えて、~乗り越える」の意味の二つが掛かっています。
素敵ですよね。このタイトルの掛言葉は『HANABI』にも通じる部分ですよね。
また、「悲しいことを悲しいと思わない僕の性格からできた」と桜井さんは語っている歌でもあります。
また、『ヒカリノアトリエ』のシングルのシークレットトラックとして、桜井さんの弾き語り、および解説が行われたことが記憶に新しいです。
まだ聞かれてない方がいれば是非おすすめですよ♪
こんな名曲、『Over』ですが、なかなかライブでは演奏してくれないなぁという印象があります…
いや、「Tour 虹」でも一部演奏したようですが…
ここでの演奏が『ヒカリノアトリエ』に収められているわけですから。
私はいかんせん、ホールツアーで高倍率だったのと、会場までの移動時間の兼ね合いで、チケット取れなかったため、『Over』聞けないなぁという印象があるのかもしれませんが…
ドームツアークラスではいつ演奏したかと言うと、DVD化されているスケールだと、2005年の「I LOVE U Tour」になるんですかね?
ひぇぇ、めちゃめちゃ前なんですねぇ…
『ヒカリノアトリエ』の中で、桜井さんもご自身で語っていました「物議を醸す」歌詞はありますが、繊細で美しい歌詞ですので、少しずつ見ていきたいと思います。
『Over』 作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
何も語らない君の瞳の奥に愛を探しても
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
言葉が足りない そうぼやいてた君をふっと思い出す
『Atomic Heart』より『Over』
その人自身が何も語らなくても、瞳が全てを語っていることはありますよね。
「目は口ほどに物を言う」とはよく言ったものです。
「君」の瞳の中にはあると信じていた「僕」に対する愛情は見つからない…
その要因は「言葉が足りない」という問題を抱えていた「僕」にあるのでしょうか。
かつて「君」が「僕」に語っていた「言葉が足りない」と言うぼやきがこの局面で暗に「君」に返ってくるという皮肉。
この場面は別れ話をしているのでしょうか、それとも、「君」の不貞が露見し、問い詰めている場面でしょうか?それとも、それとなく、不穏を感じ取ったのでしょうか。
今となれば
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
顔のわりに小さな胸や 少し鼻にかかるその声も
数え上げりゃ きりがないんだよ 愛してたのに
心変わりを責めても空しくて
『Atomic Heart』より『Over』
言葉にはしなかったのかしれませんが、「僕」は「君」のことを愛していたんですね。
それは「顔のわりに小さな胸」であったり、「少し鼻にかかる声」であったりも。
「君」の好きな部分というのは際限なくあるのに、「言葉が足りなく」、伝えなかったのかもしれませんね。
その結果として、「君」は心変わりをし、違う「誰か」を好きになってしまった…(単に愛がなくなってしまっただけかも)
それを責めても、「君」の気持ちは戻ってくることはない。
その事実がわかっているだけに、責めている「僕」は自分自身で非常に虚しさを感じてしまうんでしょうね。
鼻にかかる声というのも、好みは分かれると思いますが、一般的に猫撫で声などと類され、可愛らしい声とされていますが、やはり聞き取りづらかったり、幼く聞こえたりするので他の歌詞を踏まえると、ここではどちらかと言うと欠点として描かれていると思います。(敵も作りがちなイメージもどことなくありますし…)
そして、「物議を醸す」箇所笑
小さな胸というのは、桜井さんも仰っていたように、好みは分かれますが、世間的にはいわゆる巨乳という存在に対しては低く評価されるもの。所謂、ちょっとした欠点として書かれています。
「あばたもえくぼ」ということです。
桜井さんは「欠点ではあるかもしれないけれど、「僕」はとっても大好きだったよ、なぜなら、世界にひとつだけの「君」の胸だから。」と語っていました。
意味は伝わっていたんですが、桜井さんが言葉にすると、ちょっと面白いですよね。
なんとなくわかるっていう絶妙の表現だと私は思うんですけどね。
この部分の歌詞から、桜井さんは度々「桜井さんは顔を見れば、胸の大きさがわかるんですか?」と聞かれるそうです笑
桜井さんなら、わかるかも?と思いますが、わからないそうです笑
詳しくは『ヒカリノアトリエ』参照ですよ♪
”風が伝染るといけないからキスはしないでおこう”
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
って言ってた
考えてみると あの頃から君の態度は違ってた
『Atomic Heart』より『Over』
「優しさ」をまとった違和感。
2人の関係が彼女の中から込み上げてくるものが「僕」に向けられたものではなくなっていった。
一見、「僕」に対する優しさに見えますが、その背後にはもやっとした感情が渦巻いていたんですね…
いざとなれば
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
毎晩君が眠りにつく頃 あいも変わらず電話かけてやる
なんて まるでその気はないけど わからなくなるよ
男らしさって一体 どんなことだろう?
『Atomic Heart』より『Over』
電話を毎晩かけるというようなマメさは割と評価されますよね。
その時に「足りなかった言葉」を掛けたりして。
そんなことをしていたら良かったのか、今からそれをしても間に合うのか、何て想像したりするのだけど、目の前にいるのは、瞳の奥にかつての「愛」を失ってしまった「君」。
時代錯誤的ではありますが、男らしさとは「男は黙って」みたいな(クールポコ感…)感じに、女は三歩下がって、みたいな…
今では?が浮かぶような関係性ですが、この曲が1994年ではまだこんな感じが「男らしさ」のイメージの残滓として存在していたのかもしれないですね。
一方で、毎晩電話を掛けるというのはある種の「女々しさ」のようなものも帯びている。
ただ、そういったことを男性に求められるという間での葛藤なのでしょうか。
結局、そのように行動する訳ではない「僕」なのですが…
夕焼けに舞う雲
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
あんな風になれたならいいな
いつも考え過ぎて失敗してきたから
『Atomic Heart』より『Over』
先ほど、「僕」と「君」が別れの瞬間を迎えているにも、「男らしさ」を考えているように、考え過ぎてしまう「僕」。
夕陽の「色」に染まり、「行き先」を風に流される雲を見て、自然に身を任せ、いろんなものをそのまま受け取れる寛容さなどを見出し、憧憬を抱いたのですかね。
憧憬を抱いたあの雲のように、「別れ」というものをありのままに受け入れる覚悟が灯っていった契機としての場面です。
今となれば
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
嘘のつけない大きな声や家事に向かない荒れた手のひらも
君を形成る全ての要素を 愛してたのに
心変わりを責めても君は戻らない
いつか街で偶然出会っても 今以上に綺麗になってないで
たぶん僕は忘れてしまうだろう その温もりを
愛しき人よ さよなら
『Atomic Heart』より『Over』
嘘のつけないような大きな声で話してしまうタイプで、手も荒れがち。
ここでも所謂、ちょっとした「欠点」に相当する部分かもしれませんが、そんな部分を含めて愛していた。
やっぱり責めたとしても、「君」は戻ってこないことはわかっている…
せめて、いつか会った時に「後悔」を生まないように、せめて、綺麗になってくれるな、という切ない、虚しい要求ですね。
「温もり」という繊細な触覚のイメージや精神的な感覚は割とすぐに記憶から消えてしまいますよね。
その「温もり」とともに、「君」に決別を決意します。
何も語らない君の瞳も いつか思い出となる
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
言葉にならない悲しみのトンネルを さぁくぐり抜けよう
『Atomic Heart』より『Over』
愛を探しても見つからなかった「君」の瞳もいつかは過去のものとなる。
「言葉が足りない」というのは、「君」が「僕」に発したものでしたが、実際は2人は「言葉が足りない」という特徴を共通して有していたのか、それとも、「僕」の特徴が「君」に影響を与えたのか。
今となってはわからないことですが、結局、「言葉」を介さずに、静かに2人の恋は「OVER」していくんですね。
以上です。
この『OVER』は「ツービートで、KAN」という仮タイトルにあるようにKANさんの影響もあるようですが、ギルバート・オサリバンの『Alone Again』という楽しいメロディにも関わらず、結婚式の日に婚約者から逃げられた、辛い生涯を送ってきた男の歌にも影響を受けていると仰っています。
悲しいというか、もどかしいというか…
そういう歌ですが、音楽は非常に明るいものですよね。
同時期の『innocent world』や後の『Tommorow never knows』などもそうですよね。(2連拍問題も発生するのですが)
まぁ、あくまでも私の印象ですが…
『Over』のテーマは一つに「言葉」があるのかな?と考えました。
「言葉が足りない」と言われていた「僕」の特徴が伝染ってしまい、最後にはそれが「君」の姿の最後の思い出となる。
ただ、思い出される「君」の特徴は、声に関するものが多いという事実は仮に「言葉が足りない」という特徴が日常の中にも次第に姿を現していたとすれば、「僕」の中の恋心は深層意識では少しずつ離れていたのかも知れませんね。
しかし、確かに、恋は終わってしまったかもしれませんが、2人の間には何かが残り続ける…
そういったことを想起しました。
事実かはわかりません。「僕」と同じように考え過ぎてしまっているのかもしれませんし。
ただ、美しい歌であることは確かだと。
一度はライブで聴いてみたいなぁと今回書いていて強く思いました。
コメント
[…] 言葉が足りない」と言われていた『Over』の「僕」に聞かせてやりたい) […]