【書評】『「学力」の経済学』/中室牧子 

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読書

 

 

 

この本を読めばわかること・身につくこと

・より効果の高い教育を行うことができるようになる。

・根拠のない「常識」から脱却することが出来る

・これから先もっと発展していくであろう分野を「今」学ぶことが出来る

 

『データで読む 教育の論点』でも少し言及させていただきましたが、教育では経験論が強く、なかなか客観的な論拠というものとは相性が悪いという部分があるかと思います。

 

そんな分野にデータにしっかりと基づいた視点から教育を語ることが少しずつ増えていく契機となった一冊を紹介させていただきたいと思います。

 

結構売れていた印象があるので、もうお読みになった方も非常に多いと思いますが、その本とは、『「学力」の経済学』です!!

 

経済学と教育をうまく結びつけ、様々な教育的施策などの効果測定を行なっています。

 

同種の本では『図表で見る教育』など文部科学省がOECDのデータを基に作成した本が毎年出版されていますが、データの羅列であったり、各国のデータ収集の程度に差があったり、そもそも日本にフィーチャーされた部分が少なかったりと一般受けしないものとなっています。

 

また、その他では社会教育学の苅谷剛彦先生や同じ教育経済学の橘木先生などが一般向けの本を多数出版されていますが、一般社会における影響力という観点では『「学力」の経済学』に勝るものはなかなかないのかなぁと思います。(個人の感想です)

 

データやエビデンスに基づいた視点で教育を語ることはもしかすると、抵抗感があるという方もいらっしゃるかも知れません。

 

生き血の通っていないデータ主義では意味がない、という印象を受けてしまうのかも知れません。

 

もちろん、データは絶対ではありません。

 

90%の人に効果があったと言われても、もしかすると、自分は10%側の人間であるかも知れません。

 

有意だった成果が出ていた条件とは現実は大きく異なっているために、意味がないと思われることもあるかも知れません。

 

ただ、個人の経験論はもっと一般との解離性は大きいのだと思います。

 

例えば、『ビリギャル』

 

「落ちこぼれ」だった子が短い期間で慶応に合格するまでに成長する。

ああいう事例は1%にもない事例ですよね。(だからこそ、その奇跡に心踊らされるのだと思います)

 

でも、少なからず影響された人はいるはず。

 

『ビリギャル』を模倣しても、実際には慶応に行ける事例は少ないにも関わらず、少し真似してみたりする。

 

これって少し変なことですよね?

 

(あ、一応断っておきますが、個人的に『ビリギャル』は大好きな作品ですし、何なら作者の坪田さんの講演に足を運んだことがあるくらいには好きです。)

 

でも、この変なことが非常にたくさんあります。

 

そして、教育の場ではそれが許されてしまうことがより多い印象があります

 

経験論などを価値がないと言いたい訳ではないです。

 

成功者の経験などはその中から「何か」を抜粋して自分のものにするなど、非常に意味があるこいとだと思います。

 

例えば、ルソーの『エミール』に基づいて、子どもを教育した人がいて、その人がルソーにそのことを伝えたところ、ルソーは「上手くいかなかったでしょう?」と答えたように、それを盲信することは危険なのです。(まぁ『エミール』は経験論とは少し違いますが…)

 

客観性が「保証」されているデータに基づく視点は汎用性があります。

 

学校教育などでは一層こういったエビデンスに基づく施策が求められる訳ですし、この分野はもっと発展していくと思います。

 

そんな教育にエビデンスという風を吹かした『「学力」の経済学』ですが、少し内容に触れていきますと、まず、何となく正しいであろうことを明確にデータをもって否定しています。

 

・ご褒美で釣っては「いけない」
・ほめ育てしたほうが「よい」
・ゲームをすると「暴力的になる」

中室牧子(2015)『「学力」の経済学』2頁 引用 

 

これらは全て誤りであると指摘しています。 

 

そして、どのようにすれば効果的なのか?までしっかり言及しており、家庭内での実践にも容易に繋がりやすく、非常にわかりやすいです。

 

この『「学力」の経済学』の特徴としては、文章も平易で読みやすいことが挙げられます。 

 

大ヒットも納得です。

 

そして、私が先ほどつらつらと書き綴った個人の経験よりも…ということについても、第1章において、しっかりと明確に説明がされています。

 

「他人の「”成功体験”はわが子にも」活かせるのか?」と。

 

また、「”勉強”は本当にそんな に大切なのか?」という章も設けられており、我が子に「どうして勉強しないといけないの?」という永遠のテーマを投げかけられた際に、役に立つカードになるかも知れませんね。

 

このように学術的にも、教育のデータを見事に結びつけるという念願を叶えつつ、家庭においてはより効果的な教育を実践することが可能になるという多方面で影響を与える良書であると思います。

 

中室先生のもう一つの本、『「原因と結果」の経済学』という本があるように、非常に多くの原因と結果に注意を払わなければならない部分に対しても、繊細に扱っていると思います。

 

ただ、データを基に書いた本なんだなぁという以上に私たちの行動をより実践的にしてくれるので、本当にオススメですよ♪

 

 

「漫画の方がいいや」という方はこちら♪

 

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コメント

  1. […] (『「学力」の経済学』) […]

  2. […] 、なかなか効果測定がしにくい分野である教育。これは先日紹介させていただいた『「学力」の経済学』などに代表されるように、経済学と結びつくことによって、説得力の有した教育 […]

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