この本を読めばわかること・身につくこと
・「勝てる戦い」を見つけられるマーケティングを学ぶ事が出来る
・数学に基づくマーケティングを学ぶことが出来る
・確率論に基づく思考法を身につけられる
以前『苦しかったときの話をしようか』のお話もさせていただきましたが、今回は森岡毅さんと今西聖貴さんのの『確率思考の戦略論』のお話をさせていただきます。
この森岡さんはユニバーサルスタジオ時代のマーケターとしての成果は凄まじいものです。
2010年の入社以来、2016年が明けた現在までの、私(森岡)のマーケターとしてのUSJでの通算成績は、64打席63安打、打率9割8分4厘、本塁打率51%です(多くの新規事業を含む無数のプロジェクトにおいて、期待どおりコストを回収して会社に収益をもたらしたものを安打、その中でも期待値を著しく上回ったものを本塁打としています。)
森岡毅・今西聖貴(2016)『確率思考の戦略論』3頁 引用
ほぼ失敗知らずですよね。
エンタメ業界ではこの数字は異常なことだそうです。
何故これほどまでの成果を挙げられたかというと、単純に「勝てる戦い」を探しているだけだそうです。
「勝てないものは勝てない」というスタンスは森岡さんに通底しているものだと思います。
この「確率思考」というネーミングは次のような考え方で一貫しています。
「ビジネス戦略の成否は『確率』で決まっている。そしてその確率はある程度まで操作できる」
森岡毅・今西聖貴(2016)『確率思考の戦略論』4頁 引用
つまり、この本はこの確率を操作する事に焦点を当てているのです。
そして、この『確率思考の戦略論』は確かに数学的な公式は苦手意識を持ってしまう人もいらっしゃるかも知れませんが、基本的にはわかりやすい文章で構成され、わかりやすい例を用いてくださっているので、非常に読みやすいです。
また、今西聖貴さんが執筆されている章も多いので、日本有数のマーケターの考え方を複眼的に触れられることも意義深いと思います。
また、「マーケターでもないし、マーケティングなんて関係ないよ!!」という方にも是非読んでいただきたい一冊です。
マーケティング思考はあって損はない思考法ですし、マーケティングの基づく意思決定がされている訳ですし、重要だと思います。
この思考法を身につけるための、市場構造や資本主義への洞察を中心に記述した、「第1章 市場構造の本質」などは本当に考えさせられます。
その構造を基に「プリファレンス(消費者のブランドに対する相対的な好意度(簡単に言えば「好み」)のことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されているもの」の重要性が指摘されています。
この「プリファレンス」をいかに高めていくかがこの本を通じて指摘されています。
確かに、何らかの要因で好意的な印象を抱いている商品や企業に対しては、購買行動に向きやすいですよね。逆に何らかの要因によって、その好意度が低ければなかなか購買行動には至らないですよね。
注意すべきはこの「プリファレンス」が様々な要因から決定されているということだと思います。
好意度と聞くと、何となく企業イメージや商品イメージなどに終始してしまいがちのイメージはありますが、価格も影響を与えるということには注意すべきだと思います。
この価格が厄介ですよね〜
価格は安ければ安いほど良い、高ければ高いほど悪いというものでもないじゃないではないですか。
ここは少し考えなければならないことですよね。
ただ、この「プリファレンス」が低ければ、認知度が高くても、購買行動には繋がらないので、どのように「プリファレンス」を高めていくかは必要不可欠。
それに対する戦略もこの『確率思考の戦略論』に書いてあります。
「プリファレンス」の調査法や採算性の測定の方法も書いてあります。
ただ、戦略の対象としては「プリファレンス」だけでなく、他にも、「Awareness(認知)」、「Distribution(配荷)」の3つに集約されると仰っています。
各商品や企業によって抱えている問題は異なると思うので、このどれにどれくらいの資源を投入するかを考えていく事が大切なのだと思います。
なかなか分厚い本ではありますし、金額的にも、内容としても、森岡さんの本の中ではいちばんハードルを感じる一冊ではあるかと思いますが、それだけに非常に役に立つと思いますよ♪
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